曽我部恵一さん

PEOPLE & WALLS 07

曽我部恵一の
「自然体でいられる場づくり」。
ちょっとした知恵が
空間を良くする

曽我部恵一

ミュージシャン

心地よい空間を彩る大切な存在である壁と、そこで過ごす人との関係について、クリエイティブな活動に携わる人々との対話を通じて考えていくLIXIL「PEOPLE & WALLS MAGAZINE」。
今回お話を伺ったのは、ミュージシャンの曽我部恵一さん。1990年代初頭、サニーデイ・サービスのボーカリスト / ギタリストとして活動を開始。2000年代以降は自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、インディペンデントな音楽活動を展開してきました。また、レコードショップやカフェ、さらにはカレー店など、音楽という枠にとらわれずさまざまな「場づくり」も行っています。
自分が楽しめて、心地が良いと思える場所を、自らの手で生み出してきた曽我部さん。その背景にある思いや、空間へのこだわりについて語っていただきます。

取材・文:榎並紀行(やじろべえ) 撮影:寺内暁 編集:服部桃子(CINRA)

曽我部恵一
1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。1990年代初頭よりサニーデイ・サービスのボーカリスト / ギタリストとして活動を始める。2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル『ギター』でソロデビュー。2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント / DIYを基軸とした活動を開始する。以後、サニーデイ・サービス / ソロと並行し、形態にとらわれない表現を続ける。サニーデイ・サービス『もっといいね!』を2020年11月25日に、曽我部恵一『Loveless Love』を12月25日にリリース。

こんなときだからこそ、リアルな空間に可能性を感じる

曽我部さんは2004年に自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立されたのをはじめ、レコードショップ&カフェ「CITY COUNTRY CITY(以下、カフェ)」をオープンしたり、2020年春には「カレーの店・八月」を始めたりと、積極的に場づくりをされています。ご自身が楽しむための場所を、曽我部さん自らの手でつくってこられたように感じるのですが、いかがでしょうか?

曽我部:なんだろうな、そこまで深くは考えていないかなあ。自分がラクにいられるというか、居心地がいいようにやっていくうちにいまのスタイルになっただけですから。まあ、もちろんカフェもカレー屋も、自分が好きな場所ではありますけどね。

下北沢の街を歩く曽我部さん
曽我部恵一さん
カレーの店・八月の店先に置かれた看板
「カレーの店・八月」
ちなみに、カレー店はどういった経緯で始められたんですか?

曽我部:もともと15年前からカフェをやってたんですけど、そこはすごく古いビルなので、いずれ建て壊しとかがあるかもしれなくて。だから、「自分たちの店」がもう一軒あったらいいよね、みたいなことは仲間内でずっと話していたんです。で、去年たまたま良い物件が見つかったので、じゃあやろうかと。そのときは、まさかいまのような状況になるとは思ってませんでしたけどね。オープンが決まって、内装工事も終わるかというくらいの時期にああいうことになったので。

店がオープンした4月というと、まさに緊急事態宣言の最中でした。当初は、曽我部さんご自身も店頭に立たれていたそうですね。

曽我部:当初はアルバイトさんを雇う予定だったんですけど、緊急事態宣言下でのオープンだったので難しいよねと。だから最初は僕も含め、社員だけで回していました。朝の10時に出勤して仕込みを手伝ったり、当初はテイクアウトのみだったので店頭で街の人に声をかけて、直接カレーを売ったりしていましたよ。それから片づけをして、帰宅は深夜。コロナ禍になる前よりむしろ忙しくなったけど、楽しかったですね。経営者といっても僕は報酬を受け取ってないから、お店が何軒できても別に儲からないんです(笑)。楽しいって理由だけでやってました。

それは、仲間たちと一緒に場所をつくっていく楽しさなんでしょうか?

曽我部:そうですね。良いお店をみんなでつくっていくのが楽しい。僕はずっとお店にいるわけじゃないから、外側から見ることもできる。そうすると、お客さん視点で気づくこともあるので、その都度、改善点をみんなで話し合っています。カフェもカレー屋も、知恵を出し合ってちょっとでも良い空間を目指したいですね。

曽我部さんの思う、理想のお店はどういう場所ですか?

曽我部:カフェでいえば、「ゆっくりしていいよ」っていうお店側のメッセージが感じられる場所、ですかね。長居してもらって、ゆっくり本を読んだり、考えごとができたりするお店。というのも、自分でカフェをやってみて、居心地の良さを仲間と共有できる空間があるって、大事なことだなと思ったんですよ。いまはインターネットで何でもできちゃうけど、だからこそリアルな場所にすごく可能性を感じます。

インタビュー中の曽我部さん
自然体で居られる場所というか。今回のコロナ禍を経て、リアルに集える場所の良さを再確認した人も多いようですからね。ちなみに、緊急事態宣言下の5月にカフェで提供されていた、曽我部さんお手製フレンチトーストが個人的に気になっていました。あれ、すごく美味しそうですね。

曽我部:あれは、もともとは僕が家で子どもたちにつくっていたメニューですね。当時は家で仕込んで、お店で焼いていました。その頃は超時短営業で、夜はお店を開けられなかった。だから、朝に来店してくれた人に何か特別なメニューを出せないかなと思ったんですよ。

お皿に盛り付けられたフレンチトースト
曽我部さんお手製のフレンチトースト

地元・香川のような、自然と風がとおる住まいが理想

曽我部さんは、香川県の海が近い場所のご出身とうかがいました。昔ながらの日本家屋は、風がとおり抜け、四季の自然を感じられるつくりですが、曽我部さんのご実家も、お店と同じく「心地いい」場所だったのでしょうか?

曽我部:そうかもしれません。田舎で人も少なく、住宅も密集していない場所で育ちましたから。窓を開けると風が抜けていく、気持ちいいところでしたね。

いま住んでいるご自宅の空間づくりにも、気持ちよく暮らすために工夫していることはありますか?

曽我部:自宅は一軒家なんですけど、仕事部屋は地下にあって湿気がたまりやすいんです。カビが気になるので、家を建てるときに壁をすべて漆喰にしてもらいました。それでも夏場は湿度がすごく上がってしまいますね。ピークのときは除湿機を3台置いてるんですけど、それでも半日で水が満タンになることもあります。

ミュージシャンは空間のコンディションが命ですし、湿度は気になるところですね。

曽我部:あとは、風がとおるかどうかも気になりますね。地下の仕事部屋には、一応窓をつけて換気ができるようにはしています。子どもたちと一緒に1階のリビングにいるときも、なるべく窓は開けて空気を循環させたい。ちょっと寒くなるときもあるんですけどね。コロナ禍になる前から、室内の空気は結構気にしていたかもしれません。ウイルスがどうこうというより、なるべく自然の風を取り入れたほうが安心するというか、くつろげるから。ホテルなんかだと窓がまったく開かないところもあって、閉塞感を覚えます。

空気が停滞していると気が滅入りますし、それこそ楽曲制作にも影響が出そうです。

曽我部:とはいえ、やっぱり音を出すときは窓を閉めないといけないし、スタジオなんてほとんど窓はないですからね。僕の場合、それによって制作に影響が出るってことはないと思うけど、居心地のいい場所であるにこしたことはない。安心して仕事ができる空間は大事ですから。部屋自体はレコードとか機材でどうしてもごちゃごちゃになっちゃうので、せめて空気くらいは綺麗な状態にしておきたいです。

エコカラットは壁に張ることで、調湿や脱臭が期待でき、ナチュラルで心地良い空間をつくってくれます。もしかしたら、曽我部さんの理想とする空間や、ご実家の雰囲気とも近しいものがあるかもしれません。

曽我部:とても興味ありますね。壁自体が呼吸するような構造になっていて、人工のものだけど、機械的ではない。それって、暮らしにとってすごく大事だと思うんです。エコカラットを張るだけで自然に近い心地よい空間をつくってくれるというのは、とても魅力的ですね。

エコカラットを手に取り眺める曽我部さん
エコカラットを触りながら暮らしについて語っていただいた

曽我部恵一さんが選んだ
お気に入りのエコカラット導入事例

曽我部:白い全体とグレーの奥の壁のコントラストがおしゃれです。